役員挨拶

日本歯科医学会連合の臨床研究支援委員会

日本歯科医学会連合 理事
大川 周治(明海大学 臨床教授)

 令和元 (2019) 年度から令和2 (2020) 年度,および令和3 (2021) 年度から令和4 (2022) 年度の理事とともに,令和3年度からは臨床研究支援委員会の担当役員,医療職連携委員会委員そして歯科医学用語検討ワーキンググループの委員を拝命いたしました。ここでは,担当役員を拝命している臨床研究支援委員会の活動状況をご紹介いたします。
 ご存知のように,平成25 (2013) 年以降,臨床研究に対する製薬会社等の不適切な関与やデータ改ざん事件が相次いで発覚しました。これを踏まえ,研究不正を防止すべく平成30 (2018) 年4月1日に,臨床研究法が施行されました。臨床研究法は,臨床研究実施における手続的な規制や,情報公表制度を設定するとともに,臨床研究の質を確保することで,国民の信頼を確保し,もって臨床研究の推進へと繋げていくことを目的として施行されました。しかしながら,特定臨床研究の範疇の解釈や手続き的な規制の仕組みは少し複雑で,わかりにくいのも事実です。
 そこで,令和3年度では令和令和4 (2022) 年3月13日(土)に第1回目となる臨床研究支援委員会フォーラム「臨床研究法を理解してより良い臨床研究を行うために」をオンラインでライブ配信するとともに,フォーラム終了後,同 年3月15日から4月14日の1か月間,オンデマンド配信いたしました。講師としては,本委員会の栗原千絵子委員,馬場俊輔副委員長,そして委員長の岩渕博史先生にご登壇いただきました。参加申込が430名,ライブ配信アクセス数が210名,オンデマンドページアクセス数が270アクセス(165ユーザー)と予想をはるかに超える多くの方々に受講していただきました。特筆すべきは,事前申込者の所属が大学34.8%に対して,歯科診療所が35.5%だったことです。臨床を中心に活動されている方の割合が大きく,臨床研究法に対する関心の高さとともに,日本歯科医学会連合(以下,本連合)の役割の重要性を痛感いたしました。本フォーラムの①報告書,②質問への回答については,下記のURLをご覧ください。本連合のHPにアップロードしています。
① 報告書:http://www.nsigr.or.jp/pdf/2022_rinshoukenkyu_houkokusho.pdf
② 質問への回答:http://www.nsigr.or.jp/pdf/2022_rinshoukenkyu_shitsumonhenokaitou.pdf
 令和4年度では,令和3年度に引き続き令和5 (2023) 年 1 月 15 日(日)に臨床研究支援委員会 第2回フォーラム「関連法規や指針を理解してより良い臨床研究を行うために」と題して,第1回目と同様にオンラインでライブ配信するとともに,同年1月16日 から2月16日までの1か月間,オンデマンド配信する予定です。講師としては,本委員会の栗原千絵子委員,砂田勝久委員,そして委員長の岩渕博史先生にご登壇いただきます。詳細については,下記URLをご覧ください。第1回目に引き続き,多くの方々のご視聴をお待ちしています。
http://www.nsigr.or.jp/profile_jouchi_iinkai_10_01.html

 臨床研究を実施する上で,臨床研究法の理解は不可欠ですが,その内容は複雑かつ難解となってきており,種々の疑問に答えるべき身近な窓口の設置が急務となっています。本連合は日本歯科医学会の専門分科会および認定分科会を主たる会員にしていますが,本フォーラムは会員以外の方々も無料で参加可能となっており,本連合の臨床研究支援委員会は臨床研究法の疑問に答えるにふさわしい身近な窓口ではないかと考えています。やや重い責務を担う形にはなりますが,臨床研究支援委員会では継続的にフォーラムを開催するなど,今後も臨床研究法の理解を深めていただくための活動を行っていく予定です。本連合を通じて,より多くの先生方に臨床研究法の理解を深めていただければ幸いです。


日本歯科医師会と日本歯科医学会連合との連携

日本歯科医学会連合 理事
尾松 素樹(日本歯科医師会 常務理事)

 一般社団法人日本歯科医学会連合定款の第5条に,「連携」として「当法人は,歯科医療に関わる社会活動を行うために,公益社団法人日本歯科医師会をはじめ, 他の医療関係団体との連携を推進する。」とある。
 日本歯科医師会は日本歯科医学会連合の設立に際して,当法人の設立趣旨に賛同し支援を行ってきた。また,日本歯科医師会は当法人の構成会員ではないが,日本歯科医師会からも理事者を選出していただき事業運営に参加させていただいている。
 さらに,連携という観点から,2020年から猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症に対するガイドラインの作成に当たり,当法人から小林隆太郎専務理事にこの指針作成タスクチームにご参加いただき,「新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針」の第1版および第2班の発刊にご尽力いただいた。そして,今般の日本歯科医学会連合雑誌の発刊に当たっては,日本歯科医師会会員に対しても投稿の機会のご配慮をいただいている。
 日本歯科医師会としては,さらに日本歯科医学会連合について会員への周知をはかり,連携を強化し,歯科医療の向上ならびに国民及び人類の福祉に貢献していきたい。


日本歯科医学会連合のICT活用委員会

日本歯科医学会連合 理事
五味 一博(鶴見大学歯学部 教授)

 令和3年7月に開催されました日本歯科医学会連合第3回理事会において常置委員会として承認されましたICT活用委員会についてご紹介させていただきます。
 COVID-19の感染拡大に伴い歯科界をはじめ様々の分野でICTを用いた試みが検討,実践され,ZOOMやWebinarでの会議や講習会が一般的となって来た時期に当たります。そして,今まさにICT活用の可能性はこれから大きく広がろうとしている所だと思います。ICT活用委員会では,これから拡大していくであろうICTを用いた様々な可能性を学会連合会員に提示していくことが本委員会の目的であると考えています。とはいうものの連合事務局におけるICT環境はこれまで大変貧弱なものでありましたので,まずは事務局においてオンラインでの各種会議や理事会などの開催が可能な会議環境(インフラ改善)の構築を行うことが最優先事項であました。これにつきましては令和4年度において一応の環境の改善が行われ,すでに理事会を事務局会議室よりオンラインで行うことができるようになりました。現在は,会員学会におけるICT活用状態を調査することで連合として今後,各会員学会に対しどのような支援ができるかについて検討を行っているところです。その1つとして検討している事項に会員学会で主催するワークショップの開催マニュアルの作成があります。各会員学会においてはZOOMでの会議は普及してきましたがWEB上でのワークショップとなると,これまで専門的知識が必要であり,あまり行われてこなかったものと思います。そこで連合において各会員学会においても実施可能な簡便なワークショップ開催のためのマニュアルを作成し,提供することを考えています。また,マニュアルをアップするだけでなくその実施方法についてのWEBでの説明会なども行うことを予定しております。これによりコロナ禍においても活発で,かつ効率の良い学会活動が可能な環境を作り上げることができればと考えております。また,一般的になってきましたZOOMでの講習会,研修会の実施環境の質向上などについても情報を発信できればと考えています。
 ICTの持つ可能性は極めて大きなものであり,今後ICTを用いた新たな検査,診断,治療等の開発などが続々と行われていくと思います。しかし,学会連合には研究開発の直接的な機能はありませんので,ICTに係わる研究・開発のヒントの会員へ提示,また今後開発されるであろうICTを活用した機器(企業が言うDXの医療 機器)などに関する情報発信と講演会(勉強会)の開催,さらには医療ニーズマッチング会等などを検討し,各学会におけるICTの活用を後押ししていきたいと考えています。
 さらに,ICT活用委員会といたしましてはICTに係わる情報提供を行うだけでなく,多くの方が集うオンライン上の場の提供や管理をおこない,会員学会の皆様の相互交流ができる場の構築を目指していきたいと考えております。


日本歯科医学会連合の医療職連携委員会

日本歯科医学会連合 理事
柳井 智恵(日本歯科大学附属病院 教授)

 一般社団法人日本歯科医学会連合は,歯科医学を振興することによって歯科医療の向上を図り,国民および人類の福祉に貢献することを基本方針としています。 世界に先駆け,わが国は少子高齢化が深刻化し,疾病構造が変化しているなかで地域医療の需要が高まり,現代社会の医療ニーズの多様化,高度化に対応すべく,歯科医療職間・医科歯科連携を始めとする関係職種間の連携が望まれており,高い専門性を有する歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士が求められています。日本歯科医学会連合の医療職連携委員会では,広告可能な専門資格制度の確立とさらなる普及に向けた公益社団法人日本歯科衛生士会および一般社団法人日本歯科技工学会の活動を支援しています。
 令和3年度(2021年度)委員会の委員改編により本委員会の委員長を拝命いたしました。メンバーには山本松男 副委員長,石川功和 委員,吉田直美 委員,大川周治 委員,簗瀬武史 委員,岩田 洋 幹事で構成されています。
 本委員会の活動計画として以下の2つを立案しています。
・歯科衛生士と歯科技工士の広告可能な専門性獲得に向けた歯科医師との合同研修会の開催準備
・国内および海外における歯科衛生士の資格制度及びその現状,専門性に関連する調査研究
 その活動内容の一部を紹介させていただきます。

 一般社団法人日本歯科医学会連合主催 医療職連携委員会フォーラム
 「歯科衛生士と歯科技工士の専門資格獲得を啓発する」
❶ 一般社団法人日本歯科専門医機構認定歯科専門医について
 山本 松男(昭和大学歯学部)
❷ ⼀般社団法⼈日本歯科技工学会における専門技工士制度について
 石川 功和(一般社団法人日本歯科技工学会会長)
❸ 公益社団法⼈日本歯科衛生士会における認定歯科衛生士制度について
 吉田 直美(公益社団法人日本歯科衛生士会会長)

〇開催日時:令和4 (2022) 年11月13日(日)13時~14時20分
〇開催形式:オンライン (終了後12月23日(金)までオンデマンド配信)
〇フォーラム開催概要 http://www.nsigr.or.jp/pdf/202209_flyer.pdf
〇フォーラムプログラム・抄録集 http://www.nsigr.or.jp/pdf/20221113_shouroku.pdf

 また本委員会は臨時委員会の専門歯科衛生士制度検討ワーキンググループを所掌担当しています。山本松男 委員長,吉田直美 委員,茂木美保委員(日本歯科衛生士会)吉田幸恵委員(日本歯科衛生学会),金子佳代子 幹事で構成され,歯科衛生士の資格制度及びその現状,専門性に関連する調査研究を行っています。現在,国内の専門歯科衛生士制度などの専門資格確立の方向性について調査内容を纏めており,発信する予定です。
 次年度の事業計画について,今年度に続き医療職連携における歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士の合同研修会を企画しています。また一般社団法人日本歯科技工学会と協力して医療機関で広告可能な日本歯科技工学会認定専門歯科技工士の講習会を共同開催する予定です。さらには専門歯科衛生士制度検討ワーキンググループの活動を支援していきます。
 国民に切れ目のない安全で質の高い歯科医療を提供するには,次代の歯科医療を担う若手歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士の参画は必要不可欠です。医療職連携委員会はこれからも会員学会の皆さまとのつながりを深め,若手歯科医療従事者の活動を支援していきたいと考えています。今後とも皆様からのご指導とご鞭撻を賜りますよう,どうぞよろしくお願い申し上げます。


日本歯科医学会連合の大型研究推進委員会

日本歯科医学会連合 理事
山城 隆(大阪大学大学院歯学研究科 教授)

 一般社団法人日本歯科医学会連合は,日本医療研究開発機構(AMED)が目標とするオールジャパンでの国産技術による医薬品,医療機器,再生療法の開発の実現に向けた競争的な医療研究開発費の歯科医療分野からの獲得を支援するために,平成 28 年に大型研究推進委員会を設置し,毎年のシンポジウムの開催を通じて,歯学分野の大型研究を推進するための情報を発信しています。
 それまで医療分野の研究開発に関する予算は,文部科学省,厚生労働省,経済産業省のそれぞれで計上されてきたものがAMEDに集約されるようになり,研究費に関する枠組みが大きく変化しています。そして,研究の基礎段階から実用化まで一貫した研究のマネジメントが実施され,知的財産や治験などのサポートのような研究支援が充実してきました。当初,歯科領域からの申請応募件数が必ずしも十分ではなく,歯科医療がさらに発展し,国民への医療に貢献するためにも,このような体制の変化に適応し,AMEDからの支援を受けた研究開発を増やすことが急務でした。
 そこで,AMEDの大型医療研究費の枠組みを理解し,歯科医療の未来につながる革新的な研究開発を推進する方策を考えるための情報共有の場として,日本歯科医学会連合・大型研究推進委員会は,日本歯科医学会との共催にて「大型医療研究推進フォーラム」を毎年度,開催して参りました。特に,医療分野の研究開発において,基礎から実用化までの一貫した研究開発の推進と,成果の円滑な実用化が求められるようになり,このフォーラムを通じて,大学,企業,規制当局が一体となり,解決すべき技術課題や研究課題,シーズやニーズを共有することで,出口戦略も見据えた大型研究の開発についての情報提供がなされてきました。
 一方,国が定める「医療分野研究開発推進計画」は2020年度より2期が始まり,AMEDでは,医薬品,医療機器・ヘルスケア,再生・細胞医療・遺伝子治療,ゲノム・データ基盤プロジェクトなどの6つの統合プロジェクトを軸として横断的に疾患研究を開発することを推進しており,基礎研究から実用化まで切れ目なく一体的に支援する研究開発事業が実施されています。このなかで,特に医療機器・ヘルスケア事業部が創設され,初めてヘルスケアが統合プロジェクトの主要モダリティの一つとして位置付けられるようになり,健康の保持・増進のみならず疾病の予防・共生に資する取り組みが推進されるようになりました。このような変化のなか,疾病の予防について,従来の疾病の早期発見,早期治療といった二次予防や,疾病の発症後の機能の維持・回復と再発・合併症を予防する三次予防のみならず,生活習慣を改善して健康を増進し,生活習慣病等自体を抑えることで疾病の発生を抑える一次予防に取り組むべきであることが指摘されるようになりました。最近では,歯科領域のヘルスケアがこの一次予防に有効であることを示唆することが報告されるようになってきました。AMEDの医療研究開発費の採択率は約20%と,現時点においても応募課題が採択されることは容易でありません。また,基礎研究(シーズ発掘)から上市まで,継続的なAMED支援を10年以上も受け続けて出口に至ることは,研究者にとっても長期間にわたるたゆまぬ努力と忍耐の必要な道筋となります。歯科領域はヘルスケア分野に広範に関わっており,また,子どもから成人,高齢者まで,歯・顎口腔を健康に維持し続けるために,この分野での発展や機器の開発や実用化が期待されています。幸い,従来,歯科領域からのAMEDの大型研究予算の申請応募件数は少なかったのですが,この数年,獲得を目指す歯学研究者の増加傾向が認められ,実際に採択数も増加してきました。
 大型研究推進委員会は今後も,このような取り組みを通して,会員皆様における歯学の研究の発展を支援して参ります。


日本歯科医学会連合の医療安全調査委員会

日本歯科医学会連合 理事
依田 哲也(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 教授)

 医療安全調査委員会担当しております,東京医科歯科大学大学院顎顔面外科学分野の依田と申します。日本歯科医学会連合を構成する46会員学会の中では,(公社)日本口腔外科学会に所属している他に,(一社)日本顎関節学会で理事長を拝命しており,また,(一社)日本有病者歯科医療学会,(一社)歯科基礎医学会,(一社)日本歯科心身医学会,(特)日本顎変形症学会,(公社)日本顎顔面インプラント学会にも理事または代議員等として所属しております。さらに,医科歯科大学に移る前の埼玉医科大学時代までは,(公社)日本補綴歯科学会,(公社)日本小児歯科学会,(一社)日本障害者歯科学会,(公社)日本口腔インプラント学会,(一社)日本口腔診断学会,(一社)日本口腔腫瘍学会,(一社)日本口腔内科学会と実に14学会の会員でもありました。良く言えば,広く多領域に興味を持っているということですが,手を出しすぎて節操がないと言われるかもしれません。
 本連合は学術団体である会員学会を統括し,学術的根拠の確立や歯科医療技術の革新,国際連携の推進を実行するという大きな使命とともに,歯科医学と歯科医療に係る学術団体の立場から日本医療安全調査機構に参画し,医療事故調査制度等への協力と支援を通じて医療の安全に寄与する責務も担っております。
 医療事故調査制度は,平成26年6月18日に医療法の改正により成立し,平成27年10月1日に施行されました。医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い,その調査報告を民間の第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで再発防止につなげるための制度です。
 医療事故調査制度に基づいて行われる調査の対象は死亡案件に限られているため,歯科領域ではあまり関係ないと思われるかもしれませんが,2020 (令和2年) までの6年間の集計では,一般歯科で3件,歯科口腔外科で7件の発生が調査されています。決して他人事ではありません。
 本連合は機構の調査(登録)学会として参画し,毎年,日本歯科医師会と連携して医療事故調査制度研修会も実施しております。令和4 (2022) 年は2月5日にオンラインで開催し,医療事故発生時の初期対応,院内調査による情報収集と報告等について 講義,ディスカッション,小テスト等を実施しました。非常に充実した研修で機構からも高い評価をいただいております。
 死亡事故の様な重大案件はもちろんですが,歯科の日常臨床で発生する様々な医療事故にも目を向けなければなりません。会員学会だけでなく歯科医師会とも連携して,事業を進められればと思っております。本連合の活動にご協力の程,どうぞよろしくお願いいたします。

令和4年12月1日

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一般社団法人 日本歯科医学会連合