役員挨拶

日本歯科医学会連合 新型コロナウイルス感染症対策チーム

小林 隆太郎
日本歯科医学会連合 専務理事
小林 隆太郎(日本歯科大学東京短期大学 学長)

 第7波が懸念されている第6波の中,記憶を2年前に戻し,新型コロナウイルス感染症対策チームのこれまでの活動について紹介させていただきます。
 その前に,人類の歴史とウイルスについて少しだけお話させていただきます・・・人類は紀元前から,さまざまな感染症と戦ってきました。そして,パンデミックにより人類の歴史は変えられてきており,歴史をみることで,今回のパンデミックを冷静に見つめることができると感じました。生物学者で1958年のノーベル生理学・医学賞受賞者であるレーダーバーグは,「人類の優位を脅かす最大の敵はウイルスである」と述べているように,「人類がウイルスに対して効果的な対策を講じなければ壊滅的な被害を受ける可能性がある。」という事実を経験しました。
 今後,農業の拡大,採掘,インフラの発達など大規模な森林破壊による新たなウイルスとの遭遇,気候変動に伴う温暖化による永久凍土に潜む未知のウイルスの出現など,世界では今,新たな感染症のアウトブレイクに備えるため,さまざまな研究,対策が模索されています。
 今回経験したことを活かし,テーマは「新たなパンデミックに備える」での活動が重要と考えています。

 中国武漢で原因不明のウイルス性肺炎として最初の症例が確認されたのが2019年12月上旬。国際ウイルス命名委員会が新型コロナウイルスの名称をSARS-CoV-2と決定,2020年2月にWHOがSARS-CoV-2によって引き起こされる疾患名をCOVID-19と名付け,(ICD 10(国際疾病分類):「コロナウイルス感染症2019」 2021年6月1日・・「新型」は次のステージには不向きのワードと感じます)3月にWHO がパンデミック(世界的流行)を表明,欧米諸国が緊急事態宣言を発令するに至り,わが国でも感染拡大が続き,2020年3月末には東京オリンピックの延期が決定,その後,緊急事態宣言が発出されるなど,これまでに経験したことのない事態となりました。
 歯科界においても,この対応として,エビデンスに基づいた感染防止情報をいかに的確に伝えていくかが急務であり,そこで,法人格をもつ組織として独立性のある「日本歯科医学会連合」がその役割を担うことになりました。2020年3月に新型コロナウイルス感染症対策チームにより,重要かつ緊急性を有する作業をスタートしました。その結果,厚生労働省,日本歯科医師会を始め,多くの団体や組織から情報リンクの要望をいただき,現在に至っております。
 当初より,歯科診療においては標準予防策の徹底に加え,3蜜への対応が重要であることを述べてきました。そして,各診療環境に応じた院内感染予防策の工夫などによる環境整備を行い,新たな感染予防習慣を長期的に継続していく取り組みが有効と考えてきました。そこで,パンデミックにも対応出来る新たな院内感染予防対策のシステムを作ること,どのような状況下においても安全に歯科診療提供ができるシステムを求めてきました。
 新型コロナウイルス感染症に対して,私たちは「出口戦略」というよりも新たな歯科医療環境への「入口戦略」ととらえて取り組んできました。テーマは正しい知識による新たな習慣,新たな工夫です。

 これまでの活動によって形となったものの一部を下記に紹介させていただきます。

日本歯科医学会連合ホームページ 令和2 (2020) 年4月~
「新型コロナウイルス感染症について」等
日本歯科医師会ホームページ 令和2 (2020) 年4月~
歯科医師のみなさまへ(新型コロナウイルス感染症について)
日本歯科医師会の対応・対策
「新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針」第1版 令和2 (2020) 年8月
「新たな感染症を踏まえた歯科診療の指針」第2版 令和3 (2021) 年11月
国民のみなさまへ(新型コロナウイルス感染症について)
新型コロナウイルスなど感染症対策における歯科の重要性(第4弾)「マスクを知る」
令和2 (2020) 年11月
医歯薬出版「歯界展望」
「新型コロナウイルスのBiology」―ウイルスの特徴から口腔との関連まで―
令和2 (2020) 年7月8日公開(7月号)
日本歯科医師会雑誌
新型コロナウイルス感染症 : 口腔の意義と口腔健康管理の重要性
令和3 (2021) 年1月号
第一歯科出版
口腔とウイルス 新たな感染症を踏まえた歯科医療
令和3 (2021) 年1月
厚生労働省
新型コロナウィルス感染症領域別感染予防策「特別研究:新型コロナウイルス感染症に対する院内および施設内感染対策の確立に向けた研究」歯科担当
令和3 (2021) 年9月公開
クインテッセンス出版nico
患者さんを守る!歯科の感染対策
令和4 (2022) 年3月
日本歯科医師会
エビデンスに基づく一般歯科診療における院内感染(ビデオ)
令和4 (2022) 年4月
日本歯科医師会・日本歯科医学会
歯科外来診療における院内感染防止マニュアル(令和4年3月改訂版)
令和4 (2022) 年3月

令和4 (2022) 年5月1日

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